上野 栄一 理事長
理事長を拝命いたしました上野と申します。
最近の世界情勢をみますと、様々な問題が表面化し、激動の時代という感があります。科学技術ではAI、DXなどの目覚ましい発展があります。最先端医療にもAI、DXが入ってきています。災害についても頻回に起こっています。今夏の猛暑も異常気象で地球規模の異変が起きている感があります。
さて、厚生労働省は、2040年を展望した社会保障・働き方改革について、平成30年10月に「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」が設置され、団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年を見据えた検討が進められてきました。
2040年を展望すると、高齢者の人口の伸びは落ち着き、現役世代(担い手)が急減するため、「総就業者数の増加」とともに、「より少ない人手でも回る医療・福祉の現場を実現」することが必要であり、今後、国民誰もが、より長く、元気に活躍できるよう、1)多様な就労・社会参加の環境整備、2)健康寿命の延伸、3) 医療・福祉サービスの改革による生産性の向上、4)給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保、といった4つの取組みを進めることとなっています。人口動態をみると、少子高齢化が進み、今、看護に求められるのは、多職種連携など、地域住民の健康を守るための活動が重要になってきました。地域包括ケアが進む中、様々な変化に対応すべく看護も変わると思っています。
さて、看護診断というと、難しい、診断をつけるのが目的ではないかといったお話をお聞きします。看護診断は、診断が終着点ではなく、看護過程の中での、特にアセスメント後の結果として看護診断が導き出されます。医師が診断技術を持つように、看護師も診断技術をもっていますが、看護診断を導き出すことによってケアにつながります。看護過程は、情報収集から始まりアセスメント、看護診断、看護計画、実践、評価と一連の流れを持ちます。看護診断は、看護過程の中の一つの通過点です。
さて、本学会は「適切な看護を行うために、看護診断ならびに介入・成果に関する研究・開発・検証を行うとともに、会員相互の交流を促進し、また看護診断に関する国際的な情報交換や交流を行うことによって、看護の進歩向上に貢献する」ことを目的としています。
適切な看護を行うためには、看護診断ならびに介入・成果に関する研究・開発・検証は、EBNを構築するためにはとても重要です。特に臨床推論という思考過程が重要です。推論は、科学の基礎で、思考の基になるものです。アセスメントを考える時、現象学の考え方はとても重要になります。看護は、観察から始まります。観察を通して看護過程は始まります。イメージとしては。点の情報から線に結ぶ作業がとても重要と思っています。現在、看護診断学会は、いくつかの課題がありますが、理事会、監事、役員とともに新たなベクトルを決めて運営をしていきたいと思っています。看護診断学会での活動が新しい看護の景色が見えるようにしたいと思っています。また、その先にあるのは患者、家族、地域に生活する人の笑顔であると考えています。今まで築き上げてきた先輩たちの知見を尊び、日本の文化にも根差した新しい用語の開発も必要と思います。特に言葉は、時代とともに意味合いも変わってきます。この激動の時代は看護の力を求めていると私は信じています。今こそ、学会の運営についても再考して、役員一同、看護の未来のために看護診断を発展させたいと思います。またこのことが看護の質の向上につながればと思っております。関係各位の皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
最後に皆様のご健康とますますのご活躍を祈念いたしまして、ご挨拶といたします。